今日は、英語学習で注目されている「第二言語習得論」を、スペイン語学習に置き換えながらお話していきます。
第二言語習得論とは、
人が母語以外の言語を身につける時に、
「どのようなプロセスで習得していくのか」を研究する学問です。
研究は、言語学はもちろん、脳科学や心理学などと密接に関係しています。
第二言語習得研究では、多くの専門家が研究結果や理論を発表しています。
その中でも有名な、アメリカの言語学者スーザン・ガス氏が提唱した「第二言語学習の時に脳内で起こるプロセス」を解説します。
この認知プロセスとは、インプットからアウトプットまでの間に起こる学習者の意識の働き、意識の変化について示したものです。
インプットが大事だという話はみなさんも聞いたことがありますよね?
そして、実際にたくさんの方が、大量の情報をインプットしようと努力していると思います。
でも実際には
「ちゃんと勉強しているのに、全然話せるようにならない」
「文法を勉強すれば話せるようになると思ったのに、会話になれば頭が真っ白になってしまう」
というのが現実ではないでしょうか?
一生懸命単語の勉強をしたり、問題集を解いていたりしている人ほど、いつまでたっても話せるようにならないと感じていると思います。
なぜだと思いますか?
日本在住だから?才能?語学のセンス?記憶力の差?年齢?
全部違います!
私はこれまでに200名以上の方を指導してきて、早く話せるようになる人とならない人には、大きな違いがあることに気付きました。
情報インプットをするときに、大事なことが抜けていると、今やっているその努力がムダになってしまうんです。
今日は効率的なインプットの仕方についても、ワークを通じて解説していきます。
大事なお話をすることになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
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学んだ知識を垂れ流しにせず、実践で使えるようになり、
自然と話せるようになるために大事なことは、何でしょう?
結論から言うと、それは「気づき」です。
「気づきって何?」と思いますよね?
この表を見てみてください。
冒頭でお話したアメリカ合衆国の言語学者、スーザンガスさんによる
第二言語習得の認知プロセスを基に作成した表です。
何か、難しそうだなと思われるかもしれませんが、この後分かりやすく説明するので大丈夫です。
インプットとアウトプットの間には、4つのプロセスがあります。
1つ目は「気づき:noticing」
2つ目は「理解:comprehension」
3つ目は「内在化:intake」
4つ目は「統合:integration」
そしてアウトプットへ繫がります。
ちなみにこれを学習の過程でスムーズに行わなければインプットの効果が半減、
または全部無駄になってしまい、
学んだ知識をアウトプットすることができません。
それでは上から順に、何を表すのかを説明していきます。
これを知るだけでインプットの質がガラリと変わります。
1つ目の「気づき:noticing」は、
学習者が、自分の耳や目を通して入ってくる表現や音などに「意識を向けること」です
例えば、なんとなくスペイン語の音楽を聴いているときは、気づきはうまれません。
でも、学習していくうちに、単語が拾える瞬間ってありますよね?
Bailarや corazón とか。
こんな感じで、ぼーっと聞き流していた状態から、
「あ!」と思ったとき。
注意を向けたときに気づきがうまれます。
これが学習のインプットと、どのように関係があるのかは、後で説明します。
2つ目「理解:comprehension」というのは、
1つめの気づきから、単語の意味や文法の意味を理解する段階です。
Voy a bailarという文があったときに、
単語の意味だけではなく、
IR a +動詞の原形は、「~する予定」という文法知識を使って、
文全体の意味がわかる。
これが「理解:comprehension」です。
3つ目「内在化:intake」というのは、
その名の通り、理解したものを学習者の内部へ取り込んでいくことです。
ここでは、2つめの「理解」の段階で立てた仮説を検証します。
Voy a bailarを、実際に書いたり話したりすることで、
相手の反応を見て、正しく使えているかどうかを確認するところです。
4つ目の、「統合:integration 」というのは、
学習した表現が「長期記憶」として学習者内部に定着し、
自動的に使いこなせるようになる段階です。
何度も使うことで、記憶に定着させていきますよね。
さきほどの例だと、毎週ZUMBAのレッスンを受けるたびに、
「Voy a bailar」を言うことで、
意識しなくても勝手に口から出てくるようになる、という段階です。
簡単にまとめると、
①最初になんとなく聞いていた音楽から、BAILARという単語に、気づいた。
②Voy a bailarという文を、単語と文法知識を使いながら、意味を予測します。
③そして実際に書いたり言ったりすることで、予測が合っているかどうかを確認
④そして最後にVoy a bailar を何度も言うことで、アウトプットができるようになる
ということです。
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私の十八番は、
「スペイン語が話せるようになる学習法」なので、
話せるようになるという観点からお話します。
結論から言うと、それは「先に日本語で考える」です。
スペイン語はスペイン語で考えるべき!と頑なに、
日本語の介入を嫌う人がいますが、私は非効率だと考えます。
人それぞれ学習歴やバックグラウンドが違いますよね。
「私はこれで話せるようになりました」ということは簡単です。
でもそれでは意味がないと私は考えます。
他の人に当てはまるかどうかもわからないものを、お伝えするわけにはいかないと思っています。
受講生さんの結果が出た方法や、研究結果が出ているものをお話しています。
さきほど、「気づき」を得る イコール 「身近に感じる」ことだとお伝えしました。
身近に感じられる内容は、みなさん一人一人違います。
例えば、お料理が好きな人は、「ザルにあげる」ってなんていうんだろう?
というところが、気づきになるかもしれないですね。
サッカーが好きな人は、もしメッシに会えたら、何を聞きたいですか?
何か1つお願いができるとすれば、何をお願いしますか?
他にも好きなスポーツ選手やアーティストがいる方は、その人に対して、
聞きたいことやお願い事を考えてみてください。
そして、日本語でコメント欄に書いてください。
そのお願いや伝えたいことを、きちんと相手に伝わるスペイン語にするには?
と考えるんです。
ワクワクしませんか?ちゃんと伝えたいと思いませんか?
1回日本語にすることで、整理され、明確に言語化することができます。
ということは、身近に感じる、イコール、必要な表現なんだ!
という気づきがあるので、脳にも入ってきやすくなります。
これに対して
「ホセはフアンよりも背が高い」という、いつ使うのかわからない、
単語帳に載っている例文を、いきなり暗記しようとすればどうでしょう?
脳にとっては「気づき」も「身近さ」もないため、スルーしてしまいます。
「気づき」なしで覚えようとしても、すぐに忘れてしまうので、
その労力がもったいないですよね。無駄になってしまいます。
たくさんの方が勘違いしがちなのですが、
お一人お一人必要な単語やよく使うフレーズって違います。
だから、本に載っている表現をそのまま暗記しても、使えないんです。
大事なのは、自分が必要な表現を学ぶこと。
それを知るためにも、一度日本語で書く、言語化する作業は欠かせません。
講座内でも例文作成は必ず行います。これらは、ただの例文ではありません。
あなただけの、あなたのための、大切なフレーズ集です。
どんな本よりも、参考書よりも、価値のある作品集です。
ごみに捨てることなく、どんな時も自分の味方でいてくれる学習ノートを、
ぜひ作ってくださいね。
こちらの動画では、さらに詳しくわかりやすく解説しています。
ぜひ動画もご覧ください。